OMAではアマチュアピアニストの皆さまの上達を全力で応援します。
アマチュアピアニストにありがちな疑問に対し、墨田アマチュアピアノコンクール実行委員長・元ピアニスト田中良茂が回答いたします。(回答は田中の個人的見解によるものです)
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【第12回】複数の先生にレッスンを受けることについて
Q
同じ曲を複数の先生にレッスンしていただく利点と対処方法を教えてください。同じ曲でも違ったアドバイスを受けた場合、次にレッスンを受ける時、A先生にはアドバイスAを、B先生にはアドバイスBを忖度して弾いてしまうと思います。今回、せっかく審査員の先生にレッスンしていただけるチャンスがあったのに、もし今の先生と違ったアドバイスをいただいたらどうしたらいいか分からず、迷いに迷って申し込むのをやめてしまいました。
A
同じ曲を複数の先生にレッスンしてもらう利点と対処方法についてのご質問をいただきました。
まず同じ曲とは限定せず、複数の先生にレッスンを受講する意味ですが、何よりも様々な角度からの音楽や作品へのアプローチを知るチャンスになります。
言うまでもなく音楽に正解はありません。
私個人の経験から言えば、クラシック音楽(ピアノ演奏)には、やはり方向性のようなものはあると思います。
どうしてもパンクロックのような演奏はできないというか💦
仮に北東をよい方向とするならば南西に向かうことはない…、といった意味ですね。
しかし北東といってもかなり広角です。
東京駅を出発とするならば、銚子に向かう人もいれば福島に向かう人もいるかもしれません。
クラシック音楽もそんなもんです。
一つの作品でも幅広い可能性があり、複数の先生にレッスンを受講することで、自分の中の想像・創造性も膨らむ利点はあると思います。
作曲家が生きていればもしかしたら正解はあるのかもしれませんが、例えばグレン・グールドは良くも悪くも作曲家の意図を超えた表現をしました。
私はグールドが弾いたブラームスの間奏曲集は、作曲家本人の意図とは異なるだろうが、作曲家の創造力を超え、より深く大きな感動をもたらしたアルバムだと確信しています。
上記のように幅広い可能性があるため、複数の先生にレッスンをしてもらった場合の対処方法は少し複雑です。
メインとなる先生については、本当によいと思える先生がいるのだとしたら、その先生に中長期的にしっかり師事するのがよいと考えます。
途中、その先生の言っていることに疑問を抱いても、一旦は頭を空っぽにして耳を傾けるべきかと。
ただし、ある程度、自分の演奏というものが確立してきたら、その限りではありません。
そのようなレベルになれば、複数の先生の様々なエッセンスを感じ取り、自分の信じる音楽(もちろん時に批判的な声も謙虚に受け止めて)を突き詰めていくべきだと思います。
ちなみに私自身がそのように感じるようになったのは30歳前後だった思います。
師事していたギュンター・ルートヴィヒ先生が「これからは様々な講習会に行って、様々な先生の音楽を吸収したほうがよい」と言ってくれたのがきっかけでした。
もちろんそれ以前にも複数の先生に習っていたこともありましたので、一つの作品が自分の中で完成しているのであれば(反対に迷っている場合も)、一旦、他の先生のレッスンを受講してみる意味はあるかもしれません。
続いての質問は「もし今の先生と違ったアドバイスをいただいたらどうしたらいいか分からず、迷いに迷って申し込むのをやめてしまいました。」でしたね。
迷ってしまうと思われるのであれば、もちろん無理をして受講される必要はありません。
複数の先生から違うアドバイスを受けた場合の対処方法としては、それぞれの先生からのアドバイスをじっくり考え、取り入れて練習してみた上で、最終的に自分がよいと思う演奏をすることが大切です。
しかしながら、上にも書いたような「自分の演奏」が、まだ確立しているとは感じられない場合、その「最終的に自分がよいと思う演奏」が何かがわからないために、かえって混乱してしまうリスクというのは確かにありますので、迷われた末今回は見送られたというのは、今のご自身にとって適切な選択であったのではないかと思います。
ぜひ次の機会に、ご自身の演奏に別の観点からのアドバイスを活かせると感じられた場合には、チャレンジしてみてください。
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