OMAではアマチュアピアニストの皆さまの上達を全力で応援します。
アマチュアピアニストにありがちな疑問に対し、墨田アマチュアピアノコンクール実行委員長・元ピアニスト田中良茂が回答いたします。(回答は田中の個人的見解によるものです)
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【第11回】「もっと歌って」ってどういうこと?
Q
レッスンやコンクールの講評などで、よく「もっと歌って」と指摘されますが、具体的にどうしたらいいのかわかりません。
A
私も若い頃、よく先生に言われていました。具体的に理解するのにはとても長い年月が必要で、自分の頭の中では日々苦悶していました。
ですので、この場ですべてを説明するのは不可能ですし、また先生によって答えも違うと思います。先生によってはご自身もよくわかっていないのに「もっと歌って」と指摘している方もいます。また、わかっていても具体的に説明できない先生も多くいます。
実際に私が習ってきた先生達(ピアニストとしては素晴らしくても)もわかりやすく具体的な説明ができた人は少なかったと思います。
歌(い方)とは、音、音の繋がり(レガート、スタカートであってもレガートでというのが私の持論)、音の高低、音価、拍、リズム、フレーズ、節、和声等の密接な関係性によりある程度は決まってくるものだと思います。
例えば、ド・ミ・ソと上昇する音の繋がりがあれば、ほんの少しだけステルス的にクレッシェンドをかけます。
但し、単にクレッシェンドをかければよいというものではなく、音の繋がり(レガート、但しレガートとは単に物理的なレガートの意味ではない)を強く意識していないと単なる音の羅列に成り下がります。
私が最も影響を受けた師匠チェン・ピーシェンには、レガートの重要性を嫌というほど指導されました。
特にピアノは打鍵した音が次々減衰していくという非音楽的な楽器のため、歌うという作業がとても難しいのです。私は打鍵した音を、次の音にバトンタッチするまでクレッシェンドさせるイメージでいます。打鍵した音にヴァイオリニストがヴィブラートをかけるように、そしてクレッシェンドしていくイメージを持つと、音の伸びが劇的に変わるのが聴きとれると思います。これまで私は、「魔法はない」と何度も言ってきましたが、これはちょっとした魔法のようでもあります。
但し、歌い方にはたくさんの例外があります。名演奏家達(ポピュラー系の歌手でも)の演奏の中には、ハッとさせられる瞬間が多々あります。それらの中にはオーソドックスな歌わせ方でないケースもしばしばです。オーソドックスな歌わせ方というのはある意味ソルフェージュ的(ソルフェージュがどこまで含むものなのか定義するのも難しい問題ですが)なもので、物理にも似た机上の論理となってしまうことがあります。歌は地域や民族によって、また人の感性や心によって多種多様な性質があるので正解というものはありません。
しかしながらクラシック音楽の場合は、音の繋がりやフレーズを意識しないで歌うことはカタストロフィとなりますのでご留意ください。
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